「遺言なんて、まだ早い」。
そう思っていた20代・30代の方が、ある日ふとしたきっかけで考え始めます。
それは、莫大な資産を築いたからではありません。
「自分に何かあったとき、この人にきちんと残せるのだろうか?」 という、素朴な疑問からでした。
今回は、若い世代の実例とともに、法律がどのように財産を分けるのかを解説します。
前提:遺言がなければ法律どおりに分けられる
日本では、遺言がない場合、財産は民法のルールに従って自動的に分配されます。これを「法定相続」といいます。(国税庁:No.4132 相続人の範囲と法定相続分)
相続の順位は以下の通りです。
- 1位:子
- 2位:父母(直系尊属)
- 3位:兄弟姉妹
上の順位の人がいる場合、下の順位の人は相続人になりません。これは感情や関係性ではなく、法律上の立場で機械的に決まります。
事例① 30代・事実婚カップルの場合
30代男性Aさん。長年交際しているパートナーと同棲していましたが、婚姻届は提出していませんでした。Aさんの希望は「この家は彼女に残したい」というものでしたが、遺言は作成していませんでした。
【法定相続関係(Aさんのケース)】
Aさんには子どもがいません。そのため、第2順位である「両親」が相続人になります。

預貯金、投資口座、車、自宅。すべてが両親へ相続されました。
パートナーに相続権はありません。
遺言がなければ、想いがあっても法律は反映してくれないのです。
事例② 20代後半・母を支える独身男性
Bさんは母親を経済的に支えていました。兄弟はいますが、疎遠な関係です。
「母が安心して暮らせるように、多めに残したい」と願っていましたが、遺言はありませんでした。
もし両親が他界していた場合、第3順位である「兄弟姉妹」が相続人になります。
【両親がいない場合】

疎遠であっても、何十年連絡を取っていなくても、法律上は相続人になります。関係性は一切考慮されません。
事例③ デジタル資産を持つ30代女性
30代女性のCさんは、資産運用に積極的で、ネット銀行、証券口座、暗号資産(仮想通貨)などを複数保有していました。 若い世代特有の問題は、財産が「目に見えない」デジタルデータであることです。Cさんは万が一の備えをしていなかったため、家族がその全貌を把握することは不可能に近い状態でした。
法律上、これらはすべて相続対象になりますが、以下の3つの壁が立ちはだかります。
- 家族が存在を知らない:通帳や郵送物がないため、口座の存在自体が「迷宮入り」する。
- パスワードが分からない:スマホのロックやアプリの認証が解けず、残高確認すらできない。
- 海外サービスの手続きが複雑:暗号資産の海外取引所などは、日本の法律が通用しにくく、取り戻すのが極めて困難。

「誰が相続するか」以前に、「見つけられるか」が最大の問題になります。
整理されていないデジタル資産は、誰にも引き継がれず、そのまま凍結・放置されるリスクが非常に高いのです。
なぜ、若い世代ほど「想いと結果」がズレるのか
若い世代は「未婚率が高い」「事実婚・同棲が多い」「デジタル資産の保有率が高い」という特徴がありますが、相続制度は「昔ながらの家族関係」を前提に設計されています。
その結果、以下のようなズレが生じます。
- パートナーに財産が渡らない
- 思っていた割合と違う
- 関わりの少ない親族が相続人になる
遺言があれば、これらを変えることができます。 法定相続は「最低限のルール」。遺言は「あなたの意思を反映する仕組み」なのです。
📝 ここでクイズです
30代独身男性Dさん。子どもはいません。両親はすでに他界しています。兄が1人、そして長年同棲しているパートナーがいます。遺言はありません。この場合、財産は誰が相続するでしょうか?
▶ 答えを見る
第3順位である「兄」が全財産を相続します。
同棲パートナーには法定相続権はありません。
だからこそ、若い世代こそ遺言を。
「まだ早い」ではなく、「元気な今だからこそできる準備」として。
それは決して不幸の準備ではありません。
大切な人への思いやりを形にする、確かな一歩です。
そして――
その一歩を、確実な“法的効力”のある形にするためには、専門家のサポートが有効です。
遺言は、書き方や内容を誤れば無効になる可能性もあります。
また、「何を書けばいいのか分からない」という方も少なくありません。
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“万が一のときに困らせない”ために。
大切な人を本当に守るために。
今できる準備を、一緒に形にしていきませんか。