飲食店を開業する際、避けて通れないのが「お金」の話です。
営業許可の申請そのものにかかる実費だけでなく、許可を下ろすために必要な設備投資など、全体像を把握しておくことが資金計画の成功に繋がります。
本記事では、自治体別の申請手数料の目安から、開業時にかかる主な費用項目まで詳しく解説します。
1. 飲食店営業許可の申請手数料(法定実費)
営業許可を取得する際には、保健所へ支払う「申請手数料」が必要です。この金額は全国一律ではなく、店舗の所在地(自治体)によって異なります。
自治体別の費用例(東京・近畿エリア中心)
東京都および近畿一円の主な手数料目安は以下の通りです。
| エリア | 自治体例 | 手数料の目安(新規) |
| 関東 | 東京都(23区) | 18,300円 |
| 近畿 | 大阪市 | 16,000円 |
| 神戸市(兵庫県) | 16,000円 | |
| 京都市 | 16,000円 | |
| 滋賀県 | 16,000円 | |
| 奈良県 | 16,000円 | |
| 和歌山県 | 16,000円 |
※手数料は改定される場合があるため、必ず最新情報を管轄の保健所でご確認ください。
※深夜酒類提供飲食店営業届(バーや居酒屋で深夜営業を行う場合)などが加わる場合は、別途費用が発生します。
2. 申請以外に発生する「資格」の費用
営業許可の要件である「食品衛生責任者」を設置するために、資格取得費用が必要です。
- 食品衛生責任者養成講習費:約10,000円〜12,000円前後
- 各都道府県の食品衛生協会が実施する講習の受講料です。
- 調理師や栄養士の免許を既に持っている場合は、受講が免除されるため、この費用はかかりません。
3. 許可取得のために必要な「設備」の費用
保健所の検査に合格するためには、基準を満たす内装・設備を整える必要があります。
ここが最も大きな出費となります。
- 店舗工事費(内装・給排水):
- 居抜き物件かスケルトン物件かで大きく変わりますが、数百万円単位の予算が必要です。
- 特に「二槽シンクの設置」や「手洗い器の固定(L字金具等での固定が必要な自治体もあります)」など、保健所の基準に合わせるための追加工事が発生することがあります。
- 厨房設備費:
- 冷蔵・冷凍庫、洗浄設備、換気扇(ダクト)など。
- 衛生管理を維持するために、「温度計付きの冷蔵庫」や「蓋付きのゴミ箱」など、自治体ごとの細かな指定に注意が必要です。
4. 「見切り発車」は危険!想定外の出費を防ぐコツ
「なんとかなるだろう」という見切り発車での着工は、後に大きな後悔を招くリスクがあります。飲食店の開業費用は数百万円〜一千万円以上にのぼるため、入念な計画が不可欠です。
- 工事前の事前相談を徹底する
工事が終わった後に保健所の指摘で「作り直し」になると、数十万円単位の追加工事費と、オープン延期による機会損失が発生します。図面の段階で保健所に確認に行くことが、最大の節約術でありリスク回避術です。 - 中古設備の活用
厨房機器などは中古品を活用することで初期費用を抑えられます。ただし、動作不良や清掃不足で衛生検査に影響が出ないよう、信頼できる業者から購入しましょう。 - 専門家(行政書士)への報酬
確実かつスピーディーに許可を取りたい場合は、行政書士への依頼も検討しましょう(報酬:数万円〜)。これは単なる「代行」ではなく、「営業開始の遅れという最大の損失を防ぐための投資」です。
まとめ
飲食店営業許可にかかる直接的な手数料は2万円弱ですが、その背景には「基準を満たすための設備投資」という大きなコストが隠れています。
「とりあえず店を作れば許可は取れるだろう」という甘い見通しは禁物です。資金計画を立てる際は、保健所の基準をクリアするための工事費を含めた「トータルコスト」で考え、計画段階からしっかり入念に準備を進めましょう。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省『食品衛生法等の一部を改正する法律の施行について』
- 東京都保健医療局『改正食品衛生法の営業許可と届出(令和3年6月1日から施行)』
- 大阪市『飲食店等の食品衛生法に基づく営業許可』
- 日本政策金融公庫『新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+』