デジタル資産の相続はどうなる?若い世代こそ知っておきたい5つのポイント

その他

「通帳は見れば分かる。でも、スマホの中は?」

若い世代ほど、財産の多くが“デジタル”に移行しています。

  • ネット銀行
  • 証券口座
  • 暗号資産
  • キャッシュレス残高
  • サブスク契約
  • SNSアカウント

しかし、もしもの時に遺言がなければ、それらはどうなるのでしょうか。解説の前に、まずは簡単なクイズです。

📝 ちょっと考えてみてください

30代独身女性。暗号資産を保有。両親健在、同棲パートナーあり。遺言なし。
この場合、暗号資産は誰が相続するでしょうか?

▶ クイズの答えを見る

答え:両親(法定相続人)です。

民法では、配偶者と血族が法定相続人と定められています(民法887条・890条)。 同棲パートナーには法定相続権はありません。 遺言がない場合、どんなに親密な関係であっても法律上は相続の対象外となってしまいます。

今回は、デジタル資産に特化して、若い世代が直面するリスクと具体的な対策を解説します。


1. デジタル資産も相続の対象になる?

結論から言うと、デジタル資産もすべて相続の対象になります。
預金や有価証券と同様に、法律上は「財産」として扱われます。

民法896条では、

相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する

と定められています。ここで重要なのは「一切の権利義務」という文言です。
これは、預金や不動産のような“目に見える財産”だけでなく、財産的価値を有する権利全般を含みます。

具体的な対象資産

  • ネット銀行の預金債権
  • ネット証券の株式・投資信託
  • 暗号資産の保有権
  • 仮想通貨取引所に対する払戻請求権
  • 電子マネー残高
  • 有料サブスク契約に伴う未使用分の返還請求権

暗号資産は本当に相続できるのか?

暗号資産は日本の「資金決済法」により定義されています。暗号資産そのものは“モノ”ではありませんが、取引所に対する払戻請求権という形で財産的価値を持ちます。したがって、相続の対象になります。実務上も、国内取引所では相続人からの申請に基づく払戻し手続きが整備されています。


2. 「法律」と「規約」の二重構造

ここがデジタル資産特有の難点です。民法上は相続の対象であっても、「利用規約」によって制限される場合があります。

分類よくある規約制限の例具体例
制限あり一身専属(本人のみ)、譲渡禁止、死亡により失効ポイント、マイル、SNSアカウント
承継可能財産的価値が認められ、手続きが確立されているネット銀行、ネット証券、暗号資産

つまり、「法律では引き継げるが、契約(規約)で制限される場合がある」という複雑な構造になっているのです。


3. 実務で直面する「最大のリスク」

法律論よりも、現場で圧倒的に多いのは以下の問題です。

  • そもそも家族が存在を知らない
  • どの取引所を使っているか不明
  • スマホがロック解除できない
  • 二段階認証が突破できない

特に暗号資産の場合、秘密鍵や復元フレーズが分からなければ実質的に永久に取り出せません。

従来の財産との決定的な違い(比較図)

項目従来の財産(アナログ)デジタル資産
手がかり通帳、郵便物、納税通知なし(ペーパーレス)
所在自宅や金庫スマホ・クラウドの中
気づき家族が発見しやすい気づかれなければ永遠に眠る

この「不可視性」こそが、デジタル資産の相続を難しくしている最大の要因です。

ここが従来の相続と決定的に違う

  • 従来の財産: 通帳がある、郵便物が届く、固定資産税の通知が来る → 家族が存在に気づきやすい
  • デジタル資産: 郵送物なし、物理的な痕跡なし、スマホ1台の中だけで完結 → 気づかれなければ、永遠に眠る

この「不可視性」こそが、若い世代の相続リスクを高めています。


4. 万が一に備える「3つの仕組み」

想いを確実に形にするためには、以下の3つのステップが重要です。

① まずは「一覧」を作る

利用しているサービス名、資産の種類、管理方法を整理しましょう。(※セキュリティのため、パスワードそのものをノート等に書くことは推奨されません。パスワードの「在り処」を伝える工夫が必要です。)

② 遺言で「帰属先」を明記する

「〇〇証券口座の資産は母に相続させる」といった一文が遺言にあるだけで、手続きの方向性が明確になり、残された家族の負担は激減します。

③ 管理方法を整理しておく

パスワード管理アプリの利用や、信頼できる人への「情報の渡し方」をあらかじめ決めておきましょう。


5. 若い世代ほどリスクが高い理由

若い世代は「未婚率が高い」「同棲(事実婚)が多い」「親世代がデジタルに不慣れ」という特徴があります。 「パートナーに確実に残したい」「親に手続きで苦労させたくない」という想いがあっても、整理していなければ、その想いはデジタル空間に消えてしまいます。

📝 デジタル資産 管理チェックシート

あなたの準備状況をチェックしてみましょう。
当てはまる項目にチェックを入れてください。


【STEP1:保有状況の把握】

□ ネット銀行・証券口座がある
□ 暗号資産を保有している
□ 電子マネー・ポイント残高がある
□ 有料サブスク契約(動画・音楽等)がある
□ SNSアカウントやクラウドデータがある


【STEP2:家族への共有】

□ 利用しているサービス名を家族が把握している
□ どこにどのような資産があるか説明できる
□ 万一の際の連絡先(金融機関・取引所等)が明確である


【STEP3:法的な備え】

□ デジタル資産の一覧を作成している
□ パスワードの管理・引継ぎ方法を決めている
□ 遺言で資産の帰属先を明記している


⚠️ 3つ以上チェックが付かない場合

このままでは、資産が見つからない・手続きが長期化する、あるいは意図しない人に相続されるといったリスクがあります。

デジタル資産は、目に見えない「透明な財産」です。 大切な人に確実に遺すために、まずは「一覧化」することが、最も確実な第一歩になります。


📄 印刷して使えるPDF版はこちら

ご自身の整理用として使える
「デジタル資産 管理チェックシート(PDF)」をご用意しています。

デジタル資産 管理チェックシート(PDF)をダウンロード


まとめ

デジタル資産は、

  • 法律上は相続の対象(民法896条)
  • しかし、見つからなければ手続き不能
  • 事実婚パートナーには自動的には承継されない

確実性を重視するなら、専門家のサポートを受けながら整えるのが最短ルートです。

あなたの想いを、法的に確実な形へ。

デジタル資産を含めた遺言作成について、まずはお気軽にご相談ください。 複雑な状況をロジカルに整理し、大切な人へ届く形に整えるお手伝いをいたします。


出典・参考

法務省『e-GOV法令検索 民法』
金融庁 『公表資料(暗号資産関連』
総務省『通信利用動向調査』