留学生アルバイトの掛け持ちは合算!シフト管理の注意点と労働時間ルールを徹底解説
外国人の留学生をアルバイトとして雇用する際、多くの企業担当者様や留学生本人が陥りやすい「時間の壁」があります。
特に複数のアルバイトを掛け持ちしている留学生の場合、シフトの管理を徹底しなければ、知らぬ間に法律違反となってしまうケースが少なくありません。
今回は、留学生のアルバイトにおける「労働時間の合算ルール」と、学校の長期休暇中における正しい上限時間の数え方について、実務上の対策を交えて分かりやすく解説します。
1.なぜ掛け持ちはNG?労働時間の「合算ルール」とは
出入国管理及び難民認定法(入管法)において、留学生がアルバイトを行うためには「資格外活動許可」という許可を得る必要があります。この許可には、就労できる時間に厳格な上限が設けられています。
1-1.お店ごとではなく「留学生本人」のメーターで計算する
このルールを分かりやすく「バケツと水」の例で考えてみましょう。
留学生の体には、日本国内で働いてもいい時間をためる「法律のバケツ」が1つだけ用意されているとイメージしてください。
- A社(あなたのお店)で週に20時間分の水をバケツに注ぎます。
- もし留学生が、別のお店であるB社でも週に15時間分の水を注いだとします。
このとき、バケツの中身は「20時間 + 15時間 = 合計35時間」となります。
資格外活動許可のルールは、店舗ごとに「A社で〇時間、B社で〇時間」と個別にカウントされるのではなく、「その留学生が日本国内のすべての勤務先で合計何時間働いたか」という1つのバケツで計算されます。そのため、掛け持ちをしている場合は、すべての勤務時間を足し合わせなければなりません。
2.通常期と長期休暇中における正しい上限時間
留学生が働ける時間の上限は、学校の授業がある「通常期」と、夏休みなどの「長期休暇中」でルールが異なります。
2-1.授業がある通常期は「1週について28時間以内」
学校の授業がある期間は、すべてのアルバイト先の労働時間を合算して「1週について28時間以内」でなければなりません。
2-2.学校の長期休暇中は「1日について8時間以内」
学校の規則で定められた長期休業期間(夏休み、冬休み、春休みなど)においては、上限が緩和されます。 公式な入管の規定では、「1日について8時間以内」と定められています。
実務上は、1日8時間以内の範囲内で働くことで、結果的に「週40時間程度」まで就労可能と説明されることが多いですが、法律上の正確な基準は「1日8時間」という日単位の縛りである点に注意が必要です。
3.現場でよくある勘違いの具体例
実際の店舗や企業現場で発生しやすい、間違った認識の具体例を確認しておきましょう。
3-1.掛け持ちにおける時間の勘違い
🚨 よくある勘違いの事例(通常期のケース)
- × 間違った認識 「A社で週20時間」 + 「B社で週20時間」 = 合計40時間 (それぞれのお店では28時間以内におさまっているからセーフ?)
- ◯ 正しい認識 「A社で週20時間」 + 「B社で週8時間」 = 合計28時間 (A社とB社の時間をすべて合算して「週28時間以内」にするのが正しいルールです)
長期休暇中であっても同様に、A社で1日5時間、B社で1日5時間働くと合計10時間となり、「1日8時間以内」の規定を超過してしまいます。
4.企業担当者が取るべき「3つの実務上の対策」
留学生のオーバーワーク(時間超過勤務)を防ぎ、自社を守るために、現場の管理者が実践すべき具体的な対策は以下の3つです。
4-1.採用時および定期的な「面談」で掛け持ちの有無を確認する
留学生を雇い入れる際はもちろん、シフトを組む前段階などで定期的に「他のお店でもアルバイトをしていないか」「他社で週に何時間入る予定か」を具体的に聞き取る機会を設けましょう。
4-2.他社の労働時間を差し引いた範囲で自社のシフトを組む
もし留学生が他社で「週に10時間」働いていることが分かった場合、通常期に自社で設定できるシフトは最大でも「週18時間まで」となります。他社での勤務状況を把握した上で、自社のシフト枠をコントロールする必要があります。
4-3.勤務状況の申告内容を「書面やチャット」で記録に残す
口頭の確認だけで済ませるのではなく、「他社での勤務時間」や「掛け持ちをしていないことの確認」を、誓約書などの書面や、メッセージアプリ、メールといった履歴が残る形でしっかりと記録に留めておくことが、適切な労務管理の証明につながります。
5.時間を超過して働かせた場合の法的リスク
万が一、合算した労働時間が上限を超えてしまった場合、企業と留学生の双方に重大な不利益が生じる可能性があります。
5-1.留学生への影響:将来のビザ申請へのリスク
上限時間を超えて就労した場合、その留学生は「資格外活動許可違反」となり、いわゆるオーバーワーク(不法就労)の状態に該当することになります。 これが発覚した場合、学校を卒業した後に「留学ビザ」から「就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)」への変更申請や、在留期間の更新申請を行う際に、重大なマイナス要因となり、申請が不許可となるリスクが生じます。
5-2.企業側への影響:不法就労助長罪の可能性
企業側にとっても人ごとではありません。留学生が上限を超えて働いていることを知りながら、あるいは適切な確認を怠って労働させていた場合、入管法第73条の2に定められる「不法就労助長罪」に問われる恐れがあります。 この罪に該当すると判断された場合、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されるという、非常に重いペナルティの対象となる可能性があります。
6.まとめ
留学生のアルバイト雇用における労働時間は、店舗ごとではなく「留学生本人を基準にすべて合算」して管理する必要があります。 通常期は「週28時間以内」、長期休暇中は「1日8時間以内」というルールを正しく把握し、適切なシフト管理を行うことが、優秀な人材と貴社の経営を守る第一歩です。
外国人雇用の労務管理や在留資格の手続きについて、少しでも不安な点や疑問がございましたら、専門家までお気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール
行政書士
上田 恭兵(Ueda Kyohei)
神戸市中央区を拠点に、関西・近畿エリアを中心に活動しています。
外国人関連業務を中心に、在留資格申請、外国人雇用手続き、民泊許可などのサポートを行っています。
English inquiries are welcome.
参考文献・関連リンク
・出入国在留管理庁:「資格外活動許可について」
・出入国在留管理庁:「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」
・法務省:「雇用する事業主の皆様へ 不法就労防止にご協力ください。」