ビザ・在留資格申請

【日本語学校vs大学】留学生の長期休暇アルバイトでオーバーワークを防ぐシフト管理術

外国人の留学生をアルバイトとして雇用する際、多くの企業担当者様や店舗の店長様が最も頭を悩ませるのが「労働時間の管理」です。

特に夏休みや冬休みといった「長期休暇中」は、働ける時間の上限が緩和されるため、シフトを多めに組む機会が増えるかと思います。しかし、留学生が籍を置いている「学校の種類」によって、長期休暇の定義や期間が全く異なることをご存知でしょうか。

実は、世間一般の夏休み期間だからといって一律にシフトを増やしてしまうと、意図せず「オーバーワーク(時間超過勤務)」を招いてしまう重大なリスクがあります。

今回は、特に注意が必要な「日本語学校」と「大学」における長期休暇の定義の違いと、実務で法律違反を防ぐための具体的な対策を分かりやすく解説します。

1.学校の種類でこんなに違う!長期休暇の定義

出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく「資格外活動許可」において、留学生が働ける時間は、授業がある通常期は「1週について28時間以内」、在籍する学校の長期休暇中は「1日について8時間以内」と定められています。

この「長期休暇(教育機関の長期休業期間)」とは、世間一般のカレンダーや雇う側の企業の夏休みではなく、あくまで「留学生が実際に在籍している学校の学則(学校のきまり)で定められた期間」を指します。

1-1.大学や専門学校の場合

大学や専門学校の多くは、2期制(前期・後期)を採用しています。そのため、「7月下旬〜9月中旬までが夏休み」「12月下旬〜1月上旬までが冬休み」というように、まとまった期間が分かりやすく長期休暇として設定されています。スケジュールが比較的把握しやすいため、シフト管理でのミスは起きにくい傾向にあります。

1-2.日本語学校の場合

一方で、実務上もっともトラブルが発生しやすいのが「日本語学校」に籍を置いている留学生です。 日本語学校は、1年を4つに分けた「4期制」などを導入しているケースが多く、大学のような2ヶ月近い長期間の休みはほとんどありません。基本的には「学期と学期の間の短い休み(期末休業期間など)」だけが、入管法の認める長期休暇に該当します。

そのため、カレンダーの上では「8月(世間の夏休み)」であっても、日本語学校のカリキュラムで通常授業が行われている期間であれば、働ける上限は「1週について28時間以内」のままとなります。

2.なぜ日本語学校の留学生はオーバーワークになりやすいのか

日本語学校の留学生を雇用する現場で、なぜ時間超過の違反が多発してしまうのか、その具体的な理由を紐解いてみましょう。

2-1.大学生の友人との「思い込み」によるズレ

留学生のコミュニティでは、横のつながりで情報が回ることがよくあります。「大学に通っている友達が、8月だから毎日たくさん働いている」という話を聞き、日本語学校に通う留学生が「自分も8月だから同じようにシフトを増やして大丈夫だろう」と思い込んでしまうケースです。学校のスケジュールを確認せずに、自主的にシフトを増やして希望を出してくるケースが後を絶ちません。

2-2.「1日8時間」の落とし穴

例えば、日本語学校の夏休み(期末休業)が「8月10日〜8月20日」までだったとします。 この場合、8月9日までは通常期なので、すべてのアルバイトを合算して「週28時間以内」でしか働けません。8月10日になった瞬間に初めて「1日8時間以内」の上限緩和が適用されます。

このように、同じ「8月」という月の中でも、日単位でルールが切り替わるため、企業側が「8月だから多めに入ってもらおう」と月単位や週単位でざっくり管理していると、確実に法律違反(オーバーワーク)が発生してしまいます。

3.現場の担当者が取るべき「2つの実務上の対策」

悪意がなかったとしても、上限時間を超えて就労させた場合は企業側も重い責任を問われます。トラブルを未然に防ぐために、現場で必ず実践していただきたい対策は以下の2つです。

3-1.「学則」や「年間スケジュール表」のコピー提出を求める

留学生からの「明日から学校が休みに入ります」という口頭の自己申告をそのまま鵜呑みにしてシフトを組むのは非常に危険です。 必ず、学校が公式に発行している「学則」の写しや「年間カレンダー(年中行事予定表)」、あるいは学校の学生専用ポータルサイトの画面の提示を求めてください。そこに書かれている「休業期間の開始日と終了日」を、日付ベースで正確に把握することが大原則です。

3-2.カレンダーに「上限緩和期間」を明記してシフトを組む

把握した長期休暇の期間を、店舗のシフト管理システムやカレンダーに明確に落とし込みましょう。 「〇月〇日〜〇月〇日までは1日8時間までOK、それ以外の日はすべて合算して週28時間以内」と管理者全員で共有し、機械的にシフトにロックをかける体制を作ることが、最も効果的な予防策となります。

4.時間を超過して働かせた場合の法的リスク

万が一、在籍校のルールに反して上限時間を超えるシフトを組んでしまった場合、双方に非常に重いペナルティが科される可能性があります。

4-1.留学生への影響:将来のビザ申請が不許可になるリスク

上限時間を超えて働いた留学生は、「資格外活動許可違反(オーバーワーク)」という違法状態になります。 これが発覚すると、学校を卒業した後に「留学ビザ」から「就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)」へ変更しようとしたり、ビザの更新申請を行ったりする際に、審査で重大なマイナス要因となり、最悪の場合は日本での就労が認められず、帰国せざるを得なくなるリスクが生じます。

4-2.企業側への影響:過失でも問われる「不法就労助長罪」

企業側にとっても、決して他人事ではありません。留学生が上限を超えて働いていることを知りながら労働させていた場合はもちろん、「知らなかった」場合であっても、在留カードの確認を怠っていたり、他社との掛け持ち状況や労働時間の管理を適切に行っていなかったりした(確認義務を怠った)と判断されれば、入管法第73条の2に定められる「不法就労助長罪」に問われます。

この罪に該当すると判断された場合、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されるという、非常に重いペナルティの対象となります。

5.まとめ

留学生のアルバイト雇用における「長期休暇」とは、世間のカレンダーではなく「本人が通う学校の規則(学則)」で決まります。特に日本語学校の留学生は、大学とは休みの期間や仕組みが全く異なるため、必ず日付ベースでの書類確認を徹底してください。

入管法には「週40時間まで」という文言は存在せず、あくまで長期休業期間中は「1日8時間以内」という日単位の縛りである点、そして企業の確認義務を怠った過失も処罰の対象になり得る点を正しく理解し、適切なシフト管理を行うことが、大切な従業員である留学生の将来と貴社のクリーンな経営を守ることにつながります。

外国人雇用の労務管理や、ビザ申請、資格外活動許可の取り扱いについて、少しでも不安な点や具体的な確認方法を知りたいという店舗オーナー様・人事担当者様は、専門家までお気軽にご相談ください。

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執筆者プロフィール

行政書士
上田 恭兵(Ueda Kyohei)

神戸市中央区を拠点に、関西・近畿エリアを中心に活動しています。

外国人関連業務を中心に、在留資格申請、外国人雇用手続き、民泊許可などのサポートを行っています。

English inquiries are welcome.

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参考文献・関連リンク

出入国在留管理庁:「資格外活動許可について」
法務省:「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」
出入国在留管理庁:「雇用する事業主の皆様へ 不法就労防止にご協力ください。

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