外国人が入管に行かなくていい?「申請取次制度」をやさしく解説

日本で暮らす外国人のみなさんや、外国人を雇用する企業の担当者様にとって、入管(出入国在留管理局)での手続きは避けて通れないものです。しかし、窓口はいつも混雑しており、手続きのために丸一日を費やしてしまうことも珍しくありません。
実は、「申請取次制度(しんせいとりつせいど)」という仕組みを利用すれば、外国人本人が入管に出向く必要がなくなります。今回は、この便利な制度の仕組みやメリットについて、神戸を拠点に活動する行政書士が詳しく解説します。
1.「申請取次制度」とは?
「申請取次制度」とは、一定の資格を持った人が本人に代わって書類を提出することで、本人が入管へ行く義務を免除してもらえる制度のことです。
1-1.原則は「本人が窓口に行くこと」
日本の法律(入管法)では、在留カードの情報を更新したり、ビザの期間を延ばしたりする場合、「本人が直接、入管の窓口に行くこと」が義務付けられています。これを「本人出頭の原則」と呼びます。
なぜ本人が行かなければならないのでしょうか。それは、入管の職員が以下の点を確認するためです。
- 本人確認: 申請している人が本当に本人かどうかを確かめるため。
- 意思確認: 本人が自分の意志で申請しているかを確認するため。
- 不備の修正: 書類に不明な点があった際、その場ですぐに質問や補正の指示ができるようにするため。
入国管理の適正さを保つため、入管法第61条の8の3第1項などで、この「本人が行くこと」がルールとして定められています。
1-2.誰が代わりにいけるの?(申請取次者)
誰でも代わりにいけるわけではありません。法律で定められた条件を満たし、地方出入国在留管理局長に届け出を行った人だけが認められます。
その代表例が、私たち「行政書士」です。
すべての行政書士ができるわけではなく、特別な研修を受け、入管実務の知識があると認められた「申請取次行政書士」だけが、その証となる「ピンク色のカード(届出済証明書)」を携帯して業務を行います。
2.「申請取次」と「代理」の違いを知っておこう
よく「代わりにやってもらう」という意味で「代理人」という言葉を使いますが、入管の手続きにおける「申請取次」と「代理」は、法律上の役割が異なります。ここを理解しておくと、専門家への依頼がよりスムーズになります。
| 項目 | 代理(法定代理人など) | 申請取次(行政書士など) |
| 法律の根拠 | 入管法施行規則第4条など | 入管法施行規則第59条の3 |
| できること | 本人に代わって意思表示(署名など)ができる | 本人が作成した書類を届ける「事実行為」を行う |
| 署名の訂正 | 代理人の印鑑等で訂正が可能 | 行政書士が勝手に本人の署名を直すことは不可 |
| 窓口の管轄 | 代理人の所在地を管轄する入管でもOK | 原則として本人や受入機関の所在地の入管 |
行政書士は、単に書類を運ぶだけでなく、プロの視点で書類の整合性を整え、入管の審査がスムーズに進むようサポートする役割を担っています。
3.申請取次制度を利用する3つのメリット
この制度を利用することで、外国人本人と入管側の双方に大きなメリットがあります。
3-1.仕事や学業に専念できる
一番のメリットは、平日の昼間に入管へ行く必要がなくなることです。
例えば、会社員の方なら「ビザ更新のために有給休暇を取る」必要がありませんし、学生の方なら「授業を休んで入管の列に並ぶ」必要もなくなります。
3-2.心理的な不安の解消
入管の手続きは複雑です。「もし書類が足りなかったらどうしよう」「窓口で難しい質問をされたら…」という不安を感じる方も多いでしょう。専門知識を持つ行政書士が間に入ることで、こうした心理的ストレスを大幅に軽減できます。
3-3.入管側の審査負担も軽くなる
正確に作成された書類が提出されることで、入管側のチェック作業もスムーズになります。窓口の混雑が緩和され、結果として社会全体の行政手続きが円滑に進むことにつながります。
4.申請取次行政書士のあゆみ
この制度は、日本の国際化に合わせて少しずつ形を変えてきました。
- 1987年(昭和62年): 会社の職員や旅行業者(法務大臣が適当であると認めた者)による取次が認められ始めました。
- 1989年(平成元年): 行政書士による取次がスタートしました。
- 2005年(平成17年): 弁護士も参入。行政書士会が責任を持って取次者の管理を行う現在の形に近い仕組みへ移行しました。
- 2012年(平成24年): 新しい在留管理制度のスタートに伴い、現在の幅広い業務範囲となりました。
5.まとめ
申請取次制度は、外国人の皆さんの日本での生活をより豊かにし、大切な時間を守るための制度です。「入管に行く時間がない」「手続きが複雑で困っている」という方は、ぜひ一度専門家へご相談ください。
執筆者プロフィール
行政書士
上田 恭兵(Ueda Kyohei)
神戸市中央区を拠点に、関西・近畿エリアを中心に活動しています。
外国人関連業務を中心に、在留資格申請、外国人雇用手続き、民泊許可などのサポートを行っています。
English inquiries are welcome.
参考文献・関連リンク
- 出入国管理及び難民認定法(入管法) 第61条の8の3
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 第6条の2、第59条の3
- 出入国在留管理庁「申請取次制度について」


