ビザ・在留資格申請

短期滞在から在留資格を変更できる?「やむを得ない特別の事情」と老親扶養の特例を行政書士が解説

「観光で日本に来ていたら日本人と結婚することになった」「高齢の親を日本に呼んで一緒に暮らしたい」——そんなとき、短期滞在からそのまま別の在留資格に変更できるのか、気になる方は多いはずです。実は、短期滞在からの在留資格変更には、通常よりも厳しいルールがあります。この記事では、その仕組みと、老親扶養の特例を含む実務のポイントを、行政書士がわかりやすく解説します。

1.短期滞在からの在留資格変更は「原則できない」

1-1.入管法上のルール

在留資格の変更は、通常であれば「変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に許可されます。しかし、短期滞在からの変更は別扱いです。入管法第20条第3項のただし書きにより、短期滞在の在留資格を持つ方の変更は、「やむを得ない特別の事情に基づくものでない限り」認められないとされています。つまり、短期滞在からの変更は、原則としてできないのが建前です。

1-2.なぜ原則できないのか

短期滞在は、観光や親族訪問、短期の商用などを目的とし、その期間内に日本を出国することを前提とした在留資格です。本来、日本に住み続けるための在留資格は、母国で「在留資格認定証明書」を取得し、正式な手続きを経て入国するのが原則です。短期滞在から安易に変更を認めてしまうと、この原則が崩れてしまうため、厳しく制限されています。

2.例外「やむを得ない特別の事情」とは

2-1.認められる可能性がある事情

とはいえ、まったく変更できないわけではありません。「やむを得ない特別の事情」があると認められれば、例外的に変更が許可されることがあります。一般に、次のような事情は考慮される可能性があるとされています。

  • 日本人や永住者などと婚姻が成立した場合
  • 日本で出産することになった場合
  • 病気やケガで治療が必要になり、帰国が難しい場合
  • 本国の情勢が急変し、帰国することが困難になった場合

ただし、これらに当てはまれば当然に許可されるわけではなく、事情の内容や真実性を総合的に判断したうえで決まります。

2-2.認められにくい事情

一方で、次のような理由だけでは、原則として変更は認められません。

  • 観光などで来日中に、就職先が決まった
  • 学校への入学が決まった
  • 単純に、もっと日本に滞在したくなった

これらは「やむを得ない特別の事情」とは評価されにくく、いったん出国して、正規の手続きで入り直すよう案内されるのが一般的です。

3.老親扶養(親の呼び寄せ)の特例

3-1.老親扶養とは

高齢の親を日本に呼び寄せて一緒に暮らすための、いわゆる「老親扶養」。これは、法律や告示に明文で定められた在留資格ではなく、「告示外特定活動」として、人道上の配慮から個別に、例外的に許可されるものです。

3-2.なぜ短期滞在からの変更と関係するのか

老親扶養は制度上定められた在留資格ではないため、在留資格認定証明書によって母国から直接呼び寄せることができません。そのため実務では、まず親が短期滞在で来日し、その後に在留資格変更許可申請を行う、という流れを取ります。つまり老親扶養は、まさに「短期滞在からの変更」で目指す典型例の一つであり、これも人道上の配慮による例外的な取扱いとして扱われる分野です。

3-3.実務上考慮される事情(法律上の要件ではありません)

老親扶養は要件や必要書類が公表されておらず、個別の判断となりますが、実務上は次のような事情が総合的に考慮されるとされています。

  • 親が高齢であること(目安として70歳以上、実務では75歳以上が望ましいとの指摘もあります)
  • 本国や第三国に、親の面倒を見られる他の身寄りがいないこと
  • 親が本国で一人で生活することが困難であること(持病や後遺症などの事情)
  • 日本にいる子(扶養する側)に、親を十分に扶養できる経済力があること
  • その子が日本で安定して生活していること

これらは法律で定められた要件ではなく、あくまで実務上考慮されるとされる事情です。当てはまっても、許可が保証されるわけではありません。

3-4.審査は非常に厳しい

老親扶養は、在留資格変更の中でも特に許可のハードルが高い分野です。近年は審査がいっそう厳しくなっているとされ、単に高齢であるというだけでは難しく、健康状態や本国での生活状況などを丁寧に立証する必要があります。また、扶養を受けることが前提のため就労はできず、許可された後も原則として毎年の更新が必要です。安易に短期滞在で呼び寄せても変更が認められるとは限らないため、事前にしっかり見通しを立てることが欠かせません。

4.実務でよくあるケース(在留資格認定証明書の活用)

4-1.配偶者ビザ×認定証明書が交付済みのケース

実務でよくあるのが、日本人と結婚したケースです。この場合、まず配偶者が本国にいる段階で「在留資格認定証明書(COE)」の交付申請を行い、その結果が出るのを待つ間に短期滞在で来日し、認定証明書が交付されてから在留資格の変更申請を行う、という進め方があります。すでに認定証明書が交付されていれば、要件を満たすことが一定程度確認されているため、短期滞在からの直接変更よりも受理・許可されやすいと考えられています。

4-2.短期滞在は「90日」を選ぶ

短期滞在で来日して変更を目指す場合、15日や30日の短期滞在では、審査が在留期限内に終わらず、オーバーステイ(不法残留)になってしまうおそれがあります。そのため、来日の際は90日の短期滞在を取得しておくことが実務上とても重要です。

5.許可のカギを握る「理由書」

5-1.なぜ特別の事情に当たるのかを論理的に示す

短期滞在からの変更で最も重要になるのが「理由書」です。理由書では、入管法の考え方を踏まえながら、「なぜこのケースが、やむを得ない特別の事情に当たるのか」を、具体的な事実に基づいて論理的に説明する必要があります。原則不可という高いハードルを越えるためには、この理由書の説得力が結果を大きく左右します。とくに老親扶養のように立証すべき事情が多いケースでは、その重要性は一層高まります。

5-2.専門家に相談するメリット

短期滞在からの変更は、そもそも例外的な扱いであり、判断も難しい分野です。自己流で進めて不許可になり、結局出国せざるを得なくなるケースもあります。少しでも可能性を高めたい場合は、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

6.まとめ

短期滞在からの在留資格変更は、入管法上、原則として認められず、「やむを得ない特別の事情」がある場合に限って例外的に許可されます。日本人との婚姻や、高齢の親を扶養する老親扶養などは考慮される可能性がありますが、いずれも当然に許可されるわけではなく、とくに老親扶養は非常に高いハードルがあります。認定証明書の活用や、90日の短期滞在の取得、そして説得力のある理由書の作成が、実務上の重要なポイントです。短期滞在中に事情が変わって不安を感じている方は、早めにご相談ください。

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執筆者プロフィール

行政書士
上田 恭兵(Ueda Kyohei)

神戸市中央区を拠点に、関西・近畿エリアを中心に活動しています。

外国人関連業務を中心に、在留資格申請、外国人雇用手続き、民泊許可などのサポートを行っています。

English inquiries are welcome.

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参考文献・関連リンク

・e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」第20条 
・出入国在留管理庁「在留資格の変更許可申請」
・出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請」
・出入国在留管理庁「在留資格「特定活動」」 

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