不法就労助長罪に「欠格事由」追加へ|一定期間、同業の許認可が下りなくなる可能性を解説
読売新聞オンラインの報道によると、出入国在留管理庁が、不法就労助長罪で処分を受けた事業者について、一定期間、同業の許認可を得られなくする「欠格事由」への追加を関係省庁に要請する方針であることが分かりました。この記事では、不法就労助長罪の基本から、今回の動きが事業者にとってどのような意味を持つのかまで、わかりやすく解説します。
1.不法就労助長罪とは何か(基本のおさらい)

1-1.どんな行為が対象になるのか
不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第73条の2に定められている犯罪で、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をさせる目的で外国人を自分の支配下に置いたりする行為などが対象になります。事業主が「不法就労だと知らなかった」場合でも、在留カードの確認を怠るなど、確認すべき注意を怠っていたと判断されれば処罰の対象になり得る点に注意が必要です。
1-2.罰則の内容(2025年改正で厳罰化)
これまで不法就労助長罪の罰則は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(併科可能)とされてきました。2025年の入管法改正により、個人については5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金へと引き上げられ、法人に対しては最大1億円の罰金が科され得る両罰規定も強化される見込みです。外国人を雇用する事業者にとって、不法就労助長罪はもともと重い犯罪でしたが、さらに厳罰化が進んでいる分野だといえます。
2.今回のニュースのポイント:「欠格事由」に追加される見込み

2-1.欠格事由とは何か
欠格事由とは、許認可を得て事業を行う際に、「この事由に当てはまる人・法人には許可を与えない」と法律で定められている条件のことです。たとえば、一定の犯罪で処罰を受けた人は、その後一定期間、同じ業種の許可を新たに得られなくなる、といった形で使われます。
2-2.現状、欠格事由になっているのは一部の業種だけ
報道によれば、現在、不法就労助長罪の処分歴を法律上の欠格事由として明確に定めているのは、労働者派遣事業と有料職業紹介事業に限られています。それ以外の多くの業種では、「禁錮以上の刑」であることが欠格事由とされているケースが多く、罰金刑にとどまった場合は、同じ業種で再び事業を行うことが可能な状態になっているとされています。
2-3.今回、入管庁が要請しようとしていること
こうした状況を踏まえ、出入国在留管理庁は、不法就労の事例が多い業種の実態を調査したうえで、関係省庁と協議しながら、不法就労助長罪の処分歴を欠格事由に追加するよう要請していく方針です。報道では、廃棄物処理、自動車リサイクル、古物営業といった業種が例として挙げられています。これが実現すると、不法就労助長罪で処分を受けた事業者は、罰金刑であっても一定期間、同業の許認可を新たに得られなくなる可能性があります。
3.背景にある「不法滞在者ゼロプラン」との関係

3-1.不法滞在者ゼロプランとは
今回の動きの背景には、政府が推進する「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」があります。これは、ルールを守らない外国人を速やかに退去させるための対応策を「入国管理」「在留管理・難民審査」「出国・送還」の3段階に整理した施策で、2026年5月22日には、より強化した「不法滞在者ゼロプラン〜強力推進パッケージ〜」が公表されています。あわせて、自民党の外国人政策本部による提言でも、不法就労助長罪を各業法の欠格事由に盛り込むことが提案されており、今回の入管庁の方針は、こうした一連の政策の流れに沿ったものと考えられます。
3-2.「ヤード」問題など、対象業種のイメージ
近年、自動車の解体・保管などを行う、いわゆる「ヤード」と呼ばれる作業場が、不法就労の温床になっているとの指摘が繰り返し出ています。法令を守らずに廃棄物やスクラップを保管するヤードの実態把握を強化すべきだという提言もあり、今回の欠格事由の議論は、こうした特定の業種における不法就労対策の一環として位置づけられています。
4.事業者にとって何が変わるのか(実務上の影響)

4-1.一定期間、同業の許認可が下りなくなる可能性
もしこの欠格事由化が実現すれば、対象業種において不法就労助長罪で処分を受けた事業者(法人・個人)は、罰金刑であっても、一定期間は同じ業種の許可を新たに取得できなくなる可能性があります。これは、事業の継続や新規参入そのものに直接影響する、非常に重い制度変更です。
4-2.外国人を雇用する事業者が今から気をつけるべきこと
制度がまだ検討段階であっても、外国人を雇用する事業者にとって「在留カードの確認を怠らない」「就労が認められた在留資格・活動範囲かどうかを都度確認する」という基本的な対応の重要性は変わりません。特に、これから許認可の欠格事由化が進む可能性がある業種(廃棄物処理、自動車リサイクル、古物営業など)に携わる事業者は、不法就労を未然に防ぐ体制づくりを、今のうちから見直しておくことをおすすめします。
5.まとめ
出入国在留管理庁は、不法就労助長罪の処分歴を、許認可の欠格事由として追加するよう関係省庁に要請する方針を示しています。現時点では対象業種や欠格期間などの詳細は固まっていませんが、政府が進める不法滞在者ゼロプランの流れを踏まえると、今後、具体化が進んでいく可能性が高いテーマです。外国人を雇用する事業者は、この動向を注視しつつ、日頃からの適正な雇用管理を徹底しておくことが重要です。
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執筆者プロフィール
行政書士
上田 恭兵(Ueda Kyohei)
神戸市中央区を拠点に、関西・近畿エリアを中心に活動しています。
外国人関連業務を中心に、在留資格申請、外国人雇用手続き、民泊許可などのサポートを行っています。
English inquiries are welcome.
参考文献・関連リンク
・読売新聞オンライン(Yahoo!ニュース)「不法就労助長罪の「欠格事由」追加、入管庁が要請へ…一定期間は同業の事業不可に」
・出入国在留管理庁「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」
・自由民主党「「不法滞在者ゼロ」へ!「強力推進パッケージ」を公表」
・出入国在留管理庁「不法就労は法律で禁止されています」(不法就労助長罪の周知資料)