【2026年6月29日答申】技能実習・特定技能・技人国の制度はどう変わる?規制改革推進会議の最新動向を解説
政府の規制改革推進会議が2026年6月29日に取りまとめた「規制改革推進に関する答申」では、技能実習制度から育成就労制度への移行、日本語能力試験のあり方、そして技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザの運用適正化など、外国人の受入れに関わる複数のテーマが取り上げられています。この記事では、その中でも特に実務への影響が大きいと考えられる3つのテーマを整理して解説します。
1.規制改革推進に関する答申とは

1-1.どんな会議が、何を決めたのか
規制改革推進会議は、政府に置かれた有識者会議で、さまざまな分野の規制を見直すための検討を行い、その結果を「答申」という形で取りまとめて政府に提出します。今回の答申は2026年6月29日付で公表され、外国人材の受入れに関する項目も含まれています。答申はあくまで「今後こういう方向で検討・実施すべき」という政府への提言であり、この時点で法律や制度がすぐに変わるわけではありませんが、今後の制度改正の方向性を示す重要な資料です。
1-2.今回とくに注目したい3つのテーマ
今回の答申のうち、外国人の在留・就労に関わる部分としては、主に次の3つのテーマが挙げられます。
- 育成就労制度を見据えた技能実習制度の試験内容の見直し
- 外国人の適正な日本語能力を確認する試験の見直し
- 在留管理制度の運用の適正化(技人国の運用明確化を含む)
以下、それぞれについて解説します。
2.育成就労制度における技能検定・評価試験の見直し

2-1.なぜ見直しが必要とされたのか(実務との乖離)
2024年6月の法改正により、2027年4月から、現行の技能実習に代わる新たな在留資格として「育成就労」が創設されます。この育成就労制度は、対象分野における3年間の就労を通じて、特定技能1号と同水準の技能を持つ人材を育成することを目的としています。
一方で、現行の技能実習制度で技能評価に使われている技能検定・技能実習評価試験については、実際の現場ではあまり使われなくなった資材や工法を前提に出題されているなど、現場の実務と試験内容がずれているという指摘が以前からありました。試験の申込みがオンラインに対応していない、受検費用が高いといった、運営面の課題も挙げられています。
2-2.具体的に何が変わろうとしているのか
答申では、厚生労働省や法務省が中心となり、試験問題の内容が実際の現場業務と乖離していないかを網羅的に点検し、必要な見直しを行うことが示されています。あわせて、外国人材だけでなく日本人受検者も含めた技能検定制度全体の観点から、実務に即した内容にしていく方針も示されました。また、育成就労制度に移行した後も、概ね3年ごとに試験内容と現場実務との適合状況を点検する仕組みが盛り込まれる見込みです。
2-3.手続のデジタル化・簡素化も進む見込み
試験の運営面では、都道府県ごとに申請書類の様式が異なり、手書き書類の郵送やFAXでの日程調整といった煩雑な手続が残っていることも課題として指摘されています。答申では、受検申請手続を都道府県で統一し、オンラインで完結できる仕組みを整備する方向性が示されました。
3.日本語能力を確認する試験の見直し(特定技能2号とB1相当)

3-1.特定技能2号でB1相当の日本語能力が必要に(令和9年4月〜)
特定技能制度についても、日本語能力試験のあり方が見直しの対象になっています。現在、1号特定技能外国人には、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)でいうA2相当以上の日本語能力が基本的に求められていますが、2027年4月からは、新たに特定技能2号の在留資格で上陸しようとする外国人について、より高いB1相当以上の日本語能力水準が求められることになる見込みです。
3-2.B1相当はJLPTでいうとどれくらいのレベルか
CEFRのB1は、身近な話題であれば主要点を理解でき、関心のある話題について簡単な文章を作ることができるレベルとされています。JLPT(日本語能力試験)の公式サイトが示すCEFR参考表示によると、N3の総合得点104点以上、N2の総合得点90点〜111点の範囲がB1相当として表示されており、目安としてはおおむね「N3上位からN2の一部」に当たるレベルと考えるとイメージしやすいでしょう。
3-3.試験の受験機会が増える可能性
現在、B1相当以上の日本語能力を客観的に測定できる代表的な試験はJLPTですが、実施回数が年2回にとどまり、コンピューターを使った受験(CBT)にも対応していません。答申では、こうした受験機会の少なさが、企業が求める人材の確保を妨げているとの指摘を踏まえ、JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)にB1相当以上を測る試験を新設することや、JLPTのCBT化を含めた実施回数の増加について検討する方針が示されています。
4.技人国(技術・人文知識・国際業務)の運用適正化

4-1.技人国の在留者は約48万人、資格外業務への従事が課題に
技人国の在留資格を持つ外国人は増加を続けており、2025年末時点で約48万人に達しています。その一方で、受け入れた外国人が、実際には在留資格に該当しない業務に従事してしまっている事案があるとの指摘が答申で取り上げられています。
4-2.ガイドラインの明確化で何が変わるか
出入国在留管理庁が公表している「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」というガイドラインには、技人国で従事できる業務の許可事例・不許可事例が示されていますが、掲載されている業種が限定的で、実務判断の参考にしづらいという課題があるとされています。答申では、このガイドラインの許可・不許可事例を拡充し、特定技能との違いや業種ごとの整理を含めて見直していく方針が示されました。
4-3.不正な仲介業者対策の強化
技人国を有する外国人が日本で就職する際には、紹介会社などの仲介者が関与するケースが多く、厚生労働省の調査によれば、令和6年9月末時点で海外から入職した技人国保有者の78.9%が紹介会社等を利用しています。一方で、本来の基準を満たさない外国人について、虚偽の申請によって技人国を不適正に取得させる不正な仲介の存在も指摘されており、これは受入れ企業側の不法就労助長罪や、外国人本人の在留資格取消しにもつながりかねない問題です。答申では、適切な仲介者を選ぶための基準をガイドラインに明記することや、求人票・仲介契約の内容を審査の中で確認する方法を具体化することが盛り込まれています。
5.まとめ
今回の規制改革推進会議の答申では、育成就労制度に向けた技能検定の見直し、特定技能2号における日本語能力要件の引き上げ(B1相当・2027年4月〜)、そして技人国の運用適正化という3つの大きな方向性が示されました。いずれもまだ「答申」の段階であり、今後の省令改正や運用開始のタイミングで具体的な内容が固まっていきます。技能実習・特定技能・技人国のいずれかに関わる方は、今後の制度改正の動向を注視しておくことをおすすめします。
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執筆者プロフィール
行政書士
上田 恭兵(Ueda Kyohei)
神戸市中央区を拠点に、関西・近畿エリアを中心に活動しています。
外国人関連業務を中心に、在留資格申請、外国人雇用手続き、民泊許可などのサポートを行っています。
English inquiries are welcome.
参考文献・関連リンク
・規制改革推進会議「規制改革推進に関する答申」(令和8年6月29日)
・出入国在留管理庁「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」
・日本語能力試験公式サイト「日本語能力試験の結果にCEFRレベルの参考表示を追加します」
・出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」